シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 4 【転機 1】
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私は特に心理学や心の病についての専門家ではないけれど、
あの頃の私は心を病んでいたと今でも思っている。
見える世界はすべて灰色で、
世界の不幸を全部一人で背負っているかのような感覚に陥っていた。
とにかく生きていることが苦しい。
もう消えてしまいたい‥‥
毎日そう思っていた。
朝どうしても起きることができずに、
会社に遅刻しそうになることがしょっちゅうあった。
何気なく道を歩いていると、
いきなり涙がでてきてどうにも止まらず、
ボロボロ泣きながら家に帰ったこともあった。
私なんて生きる価値がない、
本当につまらない人間だと思った。
そんなことがしばらく続き、完全に参ってしまった私は、
心療内科に行くことにした。
一年ほど前に、一度だけお世話になったクリニックだ。
ストレスから少し不眠気味になってしまった時に、
軽い睡眠導入剤を処方してもらったのだ。
久しぶりに訪れた心療内科に少し緊張しながら、
キレイなソファと大きな机が置いてあるオフィス風の診察室で、
先生の正面に座った。
★
「すみません。最近どうも気分の落ち込みが激しくて‥‥」
私は、ぼそぼそと話し出した。
話し出してすぐに、
先生が私のことを全く憶えていないことに気づいたけれど、
何せ一年ぶりだから仕方が無い。
先生は電子カルテの中の情報と睨めっこしながら、
必死に記憶を辿っているようだった。
そして、天気の話や野球の話をするような気軽さで、
私の人生を変える一言を放った。
「あぁ‥‥つばきさん。
一年前に一度いらっしゃった時に、
夢は海外で働くことだって仰ってた方ですね。」
え?
私、一年前、そんなことを先生に話してたの‥‥?