シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 19 【第三の忍者】
<はじめての方はまずは目次から!>
クラーク・キーでのデビューを無事に終了させたNinja Girls。
この調子ならすぐに有名になれちゃうかも、うふ。
これで東洋のパリス・ヒルトンになれるわ、うふ。
浮かれてニヤニヤが止まらなくなっていた私に、
またもや衝撃のニュースが飛び込んできた。
ある日、さくらちゃんとバクテーを食べていたら、
(なんでさくらちゃんはいつも何か食べている時に限って
大事なことを話すんだろうw)、
彼女が唐突に言ったのだ。
「あ、つばきちゃん、
Ninja Girlsに3番目の忍者が入ることになったから。」
ヲイ、唐突だな。
骨付き肉をつついていた手を止め、話を聞く。
さくらちゃん曰く、元々リクルートで働いていた人が集まる会で、
私と同じ歳ぐらいのかわいい日本人女子を見つけて仲良くなり、
話を聞いてNinja Girlsにピッタリだと思ったらしい。
「とりあえず、今度3人で集まることにしたから。
今後の方針について話し合わなきゃね。」
いつの間にかバクテーを食べ終えていたさくらちゃんが、
そう言ってニヤッと笑った。
★
私たちはアラブストリートのいつもの場所で待ち合わせることになった。
私は緊張していた。
正直、ちょっと動揺もしていた。
先々メンバーが増えるかもしれないということは聞いていたけれど、
そんなにすぐに加入するとは思わなかった。
さくらちゃんてば、いつの間にか女の子をスカウトしてただなんて。
どうせさくらちゃんの好みの、派手で鼻っ柱が強い女の子なんでしょ?
そんなことを考えながら、待つこと5分。
遠くから急いで向かってくる人影に向かって、
さくらちゃんが「こっちだよー!」と叫んだ。
★
「ごめんね、お待たせー!!」
やたらと通るはっきりした声の主が、
街灯の明かりに照らされて姿を現した途端、
私は理解してしまった。
なぜ、この子が、新しい忍者なのか。
どうして、この子が、必要なのか。
だって彼女は‥‥
ちっちゃくて、華奢で、小動物みたいで、ニコニコしてて、
私たちに決定的に欠けていた「かわいらしさ」の塊だったんだもの!
★
そう、さくらちゃんも、私も、
いかんせん「カワイイ」という単語に無縁の容姿なのだ。
さくらちゃんは茶髪の巻き髪ゴージャス系でセクシーな感じだし、
私は黒髪ストレートのしっとり系。
2人で並ぶとどうもあやしい匂いがする。
けれど彼女は、きっと一生懸命大人っぽい格好をしているのだろうけれど、
同年代とは思えないほどのかわいらしさと若さがあった。
思わず彼女を見つめてぽーっと萌えている私に向かって、
3番目の忍者が言った。
「はじめまして、”らん”です。よろしくね(はあと)」
夜のアラブストリートが、少し明るくなった気がした。