シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 27 【エンジェルになってみた】
初撮影のさくらちゃん。なかなか堂々としてるでしょ?
<はじめての方はまず目次からどうぞ!>
土屋さんとの初セッション(セッションなんて言っちゃっていいかしら笑)は、
色々な意味で忘れられない思い出となった。
慣れた段取りでテキパキと撮影をこなしていく土屋さんを横目に、
やはり私はすごく緊張していた。
そこで、いきなり私の電話が鳴り響く。
画面にはエディの番号が表示されていた。
「ハーイ!
つばき、今ストリートエンジェルの撮影なんだろ?
さくらから聞いたよ!
俺、今近くにいるから見に来てもいいかな?」
やっぱり、彼も他のフォトグラファーの撮影に興味があるのかな?
でも、そんなにフォトグラファーたちに囲まれて撮影なんてしたら緊張しちゃうな‥‥
そう思いながら、嫌とは言えずに「うん」とだけ答えた。
やばい、ますます緊張する‥‥
しばらくして撮影場所に現れた私を見たエディは、
私の顔を見るなり、笑いながら言った。
「つばき、緊張してるの?
顔がこわばってるよ?」
緊張を見破られた恥ずかしさと、
そんなことない!という気持ちがあいまって、
私はそっけなく答えた。
「ぜーんぜん大丈夫よ。
ただ眠たいだけ。」
意味不明な言い訳をする私を見て、
エディはニヤッと一度だけ笑い、それ以上何も言わなかった。
★
さくらちゃんのショットをいくつか撮り終えた後、
ついに私の番が来た。
「次はつばきさんの番だね~。
う~ん、撮影場所どこにしようかなぁ‥‥
背景がもうちょっといい感じのとこに行こう」
なんて言う土屋さんを追いかけて、次の撮影スポットに移動する。
私は極度の緊張でどうして良いかわからず、
のこのこと土屋さんの後ろをついていくだけ。
しばらく歩き回った後、
「よし、ここにしよう!」
と土屋さんは振り返り、私に立ち位置を指示した。
指定された立ち位置でぎこちなくポーズを取る私に向かって、
土屋さんは容赦なくシャッターを切った。
カシャッ、カシャッ、という音がする度に、
私の緊張はどんどん増していく。
その気持ちを読み取るかのように土屋さんは、
テキパキと、でも優しく声をかけてくれた。
「そう、もうちょっと斜め向いて。そして顎を引いて。
そうそうー!(カシャ!)
いいねー、もう一枚いってみよう!(カシャ!)
はいもっと笑ってー!」
笑おうとすればするほど頬が引き攣った。
土屋さんの後ろにエディの姿が見える。
どうやら土屋さんと、
土屋さんに撮影されている私を撮影しているらしい。
私の目線に気づくと、エディはカメラから顔を離して私の方を見、
スマイル、スマイルと身振りで伝えてきた。
そんなんわかってるわ!
うまく笑えないだけなのっ!
心の中で叫びながら、必死に笑顔を作る。
なんとか土屋さんに助けてもらい、撮影は無事終了した。
ほんの十数分の出来事だったはずなのに、
体はぐったりと疲れていた。