シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 43 【いろんな顔、いろんな自分】
<はじめての方はまずは目次から!>
ついに自分の顔と対面できる!
‥‥とばかりにトレイシーが鏡を覗き込む。
その途端、彼女の
「ワーーーーオ!信じらんない!なにこれ、ちょっとぉーーー!」
という大絶叫が響いた。
「ちょっとー!これあたしの目?どーなってんの、デカッ!!!」
「きゃー!ちょっと待ってよー、あたしじゃないみたーい!」
「ちょっと濃くない?大丈夫?かわいい?本当に??」
トレイシーの素直でかわいい反応に、みんなで大爆笑した。
人間の顔って、メイクひとつでまるで別人の顔に変わってしまう。
いつもと違うメイクをして鏡を見ると、
そこには自分の知らない自分がいる。
けど、メイクをしていても自分。
していなくても自分。
本質的な部分は変わらないんだよね。
そして私はふと思ったんだ。
きっと、人間の心も同じなんじゃないかなって。
誰もが自分の中に色んな自分を抱えてる。
臆病な自分。大胆な自分。
正義感に溢れる自分もいれば卑怯な自分だっている。
でも、どの自分も本当の自分。
それでいいんだ、って。
そんな自分を楽しんじゃえばいいんだ、って。
★
ついにファイナルシーンを撮る時がやってきた。
ファッションもメイクも大変身を遂げたトレイシーが、
その感想をありのままに伝えるっていうシーン。
トレイシーはシンガポール人だから、
英語での長いコメントも噛まずになんなくこなしてくれ、心強かった。
私たち日本人は、ここでも英語を噛みまくって、
それでまた何度ももビデオを撮り直すハメに‥‥。
なんたってエディは完璧主義で、
いつだって自分が思う最高のものを撮りたいタイプの人だったから。
彼が真剣な顔でカメラを覗き込む、
その表情が私はとっても好きだった。
自分の好きなことに打ち込んでいる人はいつだってかっこいい。
そして、ついについに、
皆で最後の「バイバーイ!」まで辿り着いて、
撮影終了!!
いやー、長い一日だった!
でも、何かひとつのことを成し遂げた達成感って何物にも変え難い。
それを再認識した日だった。
エディ、そしてトレイシー。
色々な人がNinja Girlsの企画に賛同してくれ、協力してくれている。
そんな人たちを心底ありがたいとも思った。
帰りの車の中。
達成感と感謝の気持ちを抱えながら、エディの肩にもたれつつ、
いつのまにかウトウトと夢の世界に落ちていく私は、
確かに幸せだったと思う。