シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 55 【ついにこの日が!】
<はじめての方はまずは目次から!>
ついに、この日が来てしまった。
そう、あの、77th Streetとのコラボ撮影の日。
今回のNinja Girlsのミッションも、もちろん動画作成。
Tracyeinnyの時と同じようにモデルの変身企画をやろうか
って話にもなったんだけど、
「私たちが自分自身をメイクオーバーするって企画も面白いんじゃない?」
ってことで、結局その方向で作ってみることになった。
ビデオグラファーはお馴染みのエディ。
彼になら安心してビデオをお任せできる。
彼の撮影する綺麗な動画が、私たちの持ち味とみなされることも増えてきて、
彼はすっかりNinja Girlsに欠かせない存在となっていた。
シンガポールでは知らない人がいないビッグネームである77thStreetとのコラボに、
彼も大興奮していた。
「俺、基本はイベント関連フォトグラファーやってるけど、
ファッション関連の仕事はずっと前からやってみたかったんだ。
Tracyeinnyに続いて77thStreet もやれるってすごいよね!」
機材を磨きながら嬉しそうにそう話すエディを見ていると、
私も自然と笑みがこぼれてしまう。
自分の彼氏がNinja Girlsを通して新しい事に挑戦できるって、
素晴らしいことだもんね。本当に素直に、嬉しかった。
★
撮影当日。
ちょっと緊張した面持ちのNinja Girlsを見て、
担当者のフレディさんが笑いながら言う。
「君たち緊張してるの?
心配いらないから、さあ、楽しんで!」
フレディさんは国際的に活躍するビートボクサーでもあるから、
舞台とかカメラとか、そういうのに物凄く慣れてるんだ。
自分でTシャツブランドも立ち上げているし、そこではモデルもこなしてる。
堂々としたフレディさんの姿を見ていると、改めてやる気が湧いて来た。
★
まずば冒頭部分の撮影。
Ninja Girlsが一人一人自己紹介して、
「私たち、Ninja Girlsだよ!」ってお決まりのセリフを言う場面。
エディの掛け声でスタートする。
動画撮影に少しずつ慣れてきていた私たちは、
なんとか噛まずにセリフを言い切った。
今日はちょっと、いつもよりスムーズかも!
そう心の中でガッツポーズをした瞬間、エディの大声が響いた。
「カット!」
エディがカメラを止めた。
褒めてもらえるかな?と思ったのに‥‥
顔を上げた彼の顔は、いつになく険しかった。
「君たち、ちょっと元気がなさ過ぎるよ!
もう少し楽しんだ感じを出さなきゃ!
あと、声が小さい!
全然マイクに届いてない!」
撮影した動画をチェックする彼から、
容赦ないダメ出しが入る。
"現場の緊張感”って、
もしかしてこういうことを言うのかな‥‥。
「もう一回だな。さぁ、みんな並んで!」
有無を言わさない様子で、眉をしかめたまま、
彼がもう一度ビデオカメラを構え直した。