シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 67 【神様の前髪】
<はじめての方はまずは目次から!>
あまりにもできすぎた再会と、大きなチャンスに興奮して、
その夜はあんまりよく眠れなかった私。
でもね、一晩経ってみると、
やっぱり雑誌のモデルなんてできないって気分になってしまったんだ。
だってFHMは男性誌だし、
間違いなくランジェリーとかビキニの写真になるはず。
確かにブログ用にランジェリーフォトは撮ったけど、それとこれとは話が違う。
そもそも、世間様に晒せるカラダじゃないよ‥‥
そんなことを色々考えた私は、エディに相談してみることにした。
「FHM!?
そんなの絶対ダメだよっ!!
あれがどんな雑誌か知ってるの?
キミをあの雑誌に出させるなんて俺は絶対できない。」
話を聞くや否や、エディは猛反対した。
私が何も口を挟めないほどの剣幕で‥‥
でも実はこれ、予想していた通りの反応だった。
そうだよね。
私はこれでも一応彼氏持ちだし‥‥
やっぱり彼氏が嫌がることはしちゃだめだよね。
私は何処かで止めて欲しくてエディに相談したのかもしれない。
自分の中で踏ん切りがつかないのを、
「エディが反対するから無理だ」って言い訳にすり替えたんだ。
今考えると情けない話だけど‥‥
★
それでも、私はどこかで諦めがつかなかった。
以前も書いたように、私のモットーは
「チャンスの神様は前髪しかない」。
普通なら、FHMなんて有名な雑誌のモデルになるには、
厳しいオーディションを何度もくぐらなけれはいけないはず。
でもたった今、モデルになれるチャンスが目の前に転がってる。
それは私たちが「日本人」だから。
ただただラッキーなこのチャンス。
みすみす逃すのはもったいない。
悩んだ私は、遂にさくらちゃんに相談した。
私の話を聞き終えたさくらちゃんは、
ほとんど間髪入れずに言ったんだ。
「こんなチャンス二度とないかもしれない。
つばきちゃんにぜひ挑戦してほしい。
もし応募しないなら、私が代わりに応募するよ。」
さくらちゃんはブレなかった。
「もしかして、もしかしたら、
グラビアにNinja Girlsのクレジットも入れてもらえるかもしれない。
そうなったらすごいことだよ!」
チャンスを逃すなんて、彼女の辞書にはないようだった。
★
応募写真には、少し前に撮影したランジェリーフォトを使うことになった。
撮影した時は、まさかFHMの応募写真になるなんて夢にも思わなかったけど。
ね?
なんだかすべてのストーリーが仕組まれてたみたいじゃない?
写真を送ってしばらくすると、FHMの編集長からメールが来た。
「ハイ。
FHM編集長のデイビッドだよ。
今度の日本人特集、さくらを是非モデルとして使いたい。
詳細について送るから検討してみて。」
チャンスの神様の前髪を私はもう少しで掴み損ねるとこだった。
でも代わりにさくらちゃんがガッチリ掴んでくれた。
そう、Ninja Girlsは、
始めからスポットライトを浴びる場所に立っていたわけじゃない。
一筋の光が遠くに見える度に、
こうして自分から全力で走って追いかけていったんだ。