シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 72 【恋とか愛とか】
あの暴走事件で、エディと私の関係は、暗礁に乗りあげたかにみえた。
正直に言うと、私はその少し前からエディとは長くは続かないんじゃないかって思い始めてた。
エディがどうやら、Ninja Girlsをコントロールしたがってる‥‥そう感じた頃から、私は彼を信用できなくなっていた。
それと同時に、2人の将来のビジョンもぜんぜん違うってことに気付いたんだよね。
ある日、エディが突然こんなことを言ったんだ。
「俺は、フォトグラファーを続けていきたいと思ってる。ねぇ、つばき、君はメイクアップアーティストになるといいよ!学校に通う費用は俺が出すからさ。それでチームを組んで働こーぜ。」
私は、ヘラヘラ笑いながら「それもいいね〜。」なんて言っていた。
だって、ただの冗談だと思っていたから‥‥
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この頃になるとエディはよく、将来の話をしていた。
フォトグラファーとしてのキャリアをどう築いていきたいか。家族のこと。理想のライフスタイルについて。
そして、その話をしたあとに必ずこう言い始めるんだよね。
「つばき、俺たちは本当に相性がいいと思うよ。俺も君も適齢期だし。もう俺の家に引っ越してくればいいじゃん。」
「君はメイクアップアーティストになればいいよ。そして俺たち結婚したあと、一緒に事業を起こそう。」
えーと、一体いつ私がメークアップアーティストになりたいとかいったんじゃいっ!?
てか誰があんたと事業起こしたいなんていったんじゃいっ!?
私の意見を聞きもせずに、勝手に話を進めるエディに違和感を感じることが多くなってきていた。
そう思っていた矢先のあの暴走事件。冷め始めてた気持ちに拍車がかかった。
私にも落ち度があることはわかってたよ。それは「エディと向き合うことを徹底的に避けてきた」ってこと。
恋愛をするときに、一番大事なことって、時にはお互いに本音でぶつかり合うことだよね。
時にはそれで傷つけあうこともあるだろうけど‥‥
とにかく私の場合、恋愛で「本音でぶつかり合う」のが超ニガテ。
例え相手が、私と向き合おうと努力しても、のらりくらりとかわすのが常だった。
今思うとエディは、そんな私に業を煮やしてあんなことをしてしまったのかもしれない。
でも、あの頃の私は自分を守るので精一杯だったなぁ。
都合の悪いことは全部エディのせいにして、私は被害者よ!って思ってた。自分の悪いところはどうしても見てみぬふりしたくなるのは、人間の常だよね。
そうやって自ら問題を大きくしていたことに、あの頃の私は気付いていなかった‥‥