シンガポールで一番有名な日本人の目指し方 76 【帰国】
福岡空港に降り立った瞬間、「しまった」と思った。
日本は予想以上に寒かったんだ。
もう、桜も散りそうな季節だったんだけど、まだまだ肌寒い。
トンチンカンな私は、なぜかビーサンを履いてた。
空港の外にでるなり、冷たい風に身震いする。
半年ぶりの日本。空港まで父親が迎えにきてくれていた。
地元への帰り道、車の窓からボーッと見慣れた風景を眺める。
目の前を通り過ぎていく家、田んぼ、コンビニ。
ものの30分もしないうちに、数時間前までシンガポールにいたことが、
まるで夢のように感じられてきた。
私、夢でも見てたんだろうか。
実家につくと、私が12歳のときからかわいがっていた愛犬が
気でも狂ったかのように尻尾をぶんぶん振りながら喜んで出迎えてくれた。
「ただいまー!」
★
日本で過ごした一週間はあっと言う間だった。
両親と温泉旅行にいったり、久しぶりに大学時代の友達にあって近況報告をし合ったり。
大学を卒業してからあっという間にもう6年。一緒に遊び呆けた友達も
今ではみんなそれぞれの人生を歩いてる。
こんな日々が永遠に続けばいいのに…と思うぐらい楽しかった大学時代。
でも、楽しい時間はあっと言う間に過去った。
卒業以来、私はそれまで自分の人生に向き合わなかったツケを払うかの如く、
悩み苦しむ数年間を過ごすことになる。
仕事も私生活も、何もかもがうまくいかない。
私みたいな人間なんて生きてる意味ないって、何万回思ったことだろう。
息をすることすら、苦しかった。
そうやってドン底に落ちてもがいているうちに、
もう一回チャンスが欲しい、人生を立て直したい。そう思うようになったんだ。
そして、すべてをリセットするために選んだのが「シンガポールで働く」ってことだった。
日本で腐ってた、あのときのような思いもう二度としたくない。
その気持ちが今でも私の原動力になっている。
日本に帰ってくると当時の自分の感情がありありと蘇ってきた。
なんともいたたまれない気持ちになる。
心を落ち着かせようと、母親愛用ののパソコンからNinja Girlsのブログにアクセスしてみた。
トップページには、アホっぽい私たちのランジェリーフォト。なんだかホッとした。
ああ、私はNinja Girlsとしてここに存在してる。大丈夫。
私の居場所は確かにシンガポールにある。
そう自分に言い聞かせた。画面の中の自分を見つめながら。
このことが後に大事件に発展するとも知らずにね。