シンガポールで一番有名な日本人の目指し方 79 【嵐の前触れ】
「こんなことを、お金も貰わずにやるなんて馬鹿げてるよ。」
ビブラムの撮影の話を聞いて、エディが突然言い放った。
「君たちはこんなに、時間と労力をかけて、撮影をしてるんだ。
そろそろお金を稼ぐことを考えたほうがいい。」
私は、うつむくことしかできない。
彼は不満気に続ける。
「正直さくらが、Ninja Girlsをどういう方向性に持っていきたいのか
俺にはわからない!」
また始まった。エディはこの頃何かといえばさくらちゃんを
批判することが多くなった。
私は、我慢できずに言い返す。
「Ninja Girlsは、ただシンガポールで一番有名な日本人なりたいだけ!
それ以上でも以下でもないの!私たちはただ楽しんでるだけなの!」
「ただ楽しんでるだけって、これはもう趣味の範疇を超えてるだろ!
いったい君達は、どれだけの時間と労力をこれにつぎ込んでるのか、
わかってるのかい?平日も週末もぜんぶこれでつぶれてるじゃないか!」
エディは引き下がらなかった。
★
あの頃確かに、Ninja Girlsのブログはエディにおんぶに抱っこだった。
それが彼にとって、負担になり始めていることに、
私は気づかないフリをしていたんだけどね。
お金のこともきっと私たちの為を思っての彼なりアドバイスだったんだろう。
でもね、私たちは応援してくれている人たちに
「お金で買えない価値」を提供したかったんだよ。どうしてもね。
そこは、絶対に譲れなかった。
そして、この件でエディとNinja Girlsの方向性が
違うベクトルを向いていることだけは、明らかになってしまった。
Ninja Girlsは、予想以上の速さでムクムクと大きな"何か"になっていってる。
皆そう感じていた。それは間違いなく喜ばしいことだよね。
でも私たちはまだ知らなかったんだ。急激な成長には、激しい成長痛が伴うことを‥‥
それは突然に始まったのだった。