シンガポールで1番有名な日本人の目指し方 90 【恋の最終章】
いろいろ大変な事の連続だったこの数週間。ランちゃんと、あやさんがNinja Girlsを去って、私は親と絶縁した。
なんてドラマチッチ〜〜!
いや〜ん、盛り上がってきたじゃな〜い!
今なら、そう思えるけど、この時は大変だったんだ。
でも、なんとか乗り越えて、これでよかったんだ。これからもがんばってこー!って持ち直した。
相変わらずさくらちゃんは、昔気質のお父さんみたいに、どっしり構えてた。多少の事では動じない姿をみて、あぁ、Ninja Girls、まだまだ大丈夫、って思えた部分もあったんだよね。
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ところで私とエディの関係は、悪化の一途を辿っていた。
ずいぶん前から、下り坂な関係だったんだけどね。私が母親と絶縁したあたりから、雲行きが更におかしくなってきていた。
「君は、もっとお父さんやお母さんを大切にすべきだよ。」
いつもの説教モードでエディが話し出す。
「航空券を買って両親に送ってあげたらどうだい?シンガポールに遊びにきてもらえばいい。」
「僕が車を出して、君のご両親にシンガポールを案内するよ。」
一見、親切そうにみえるこの提案は、私を最高潮にイラつかせた。
「エディ。ありがとう。でもね、あなたも知っているとおり、私と両親の関係は少し複雑なの。今はとてもそんな気になれない。」
でも、エディに私の言葉は届いていなかったみたい。彼は事あるごとに、この話題に触れた。
もちろん、エディにはエディの考えがあったんだろう。彼は病気で父親と姉を亡くしていた。愛する家族と過ごせる時間が限られたものであるということを、誰よりも身に染みてわかっていたに違いない。
だからこそ、私にしつこく両親を大事にするように言ってきたんだろう。
でも、私と彼の状況は違う。
その時私が欲しかったのは、批判じゃなくて、理解だった。
「そうか、君もいろいろ大変だったね。がんばってきたんだね。」
そう言ってもらえるだけで、きっと救われただろう。
ある日、また同じ話題を持ち出したエディに私は遂にキレてしまった。
「だから!その話はやめてって言ってるでしょ!なんで、あんたはあたしをコントロールしようとすんの?だいたい私の両親のことは、あんたに関係ないじゃない!」
エディも、熱くなって言い返す。
「俺は君をコントロールしようとなんかしてない!ただよかれと思って提案してるだけだ!」
あー、もーだめだ。
この男の何もかもが嫌いだ。
そう思ってしまった。