シンガポールで1番有名な日本人の目指し方 93 【泥沼化】
もっとお互い納得できる別れ方があったのかもしれない。今になってそう思うこともある。
彼は別れ話の直後に、Ninja Girlsのフォトグラファーを降りることを、さくらちゃんに伝えた。
「Ninja Girlsなんてどうでもいいよ。俺はつばきのためにやってただけなんだから。」
って捨て台詞を残して。
一方では、この別れをどうしても納得できなかった彼は、別れたあとも私に何通ものメールを送ってきた。
「君は、本当に自己中心的な人間だ。問題があれば、そうやっていつも逃げ出すんだろう。」
そんな攻撃的なメールがきたかと思えば、
「君のためだったら、なんでもするよ。だからもう一度チャンスをくれ。」
と、手の平を返したように復縁を迫ってきたり。
えげつないような、やりとりをするうちに、私の頭の中では、エディとの出会いから別れまでの記憶が走馬灯のように流れる。
こんなことを認めるのは本当に嫌だけれど、一つだけはっきりしている私は最初から、エディのことを愛してなどいなかった、ってこと。
じゃあ、なんで、付き合ったのかって?
それは、彼がいることで淋しさを紛らわすことができたから。
彼と出会ったのは、異国の地での生活をはじめたばかりの頃。ワクワク、ドキドキと同時に、孤独や不安を感じていたのも事実。
そんなときに何かと世話を焼いてくれたエディ。私は彼にとても感謝はしていたけど恋心を抱いたことは実は一度もなかった。
自分でも気づいていた。でも、私はその気持ちにずっと蓋をしていた。
孤独になるのが怖かったんだ。
でも、そうやって問題から逃げているうちに、彼を必要以上に傷つけ、自分自身も傷つくことになってしまった。
エディとの別れは、予想以上に泥沼化した。
よく「別れ際に、人間の本性がでる。」なんていうけど、あれ、本当に当たってるよね。
別れ話の一件で、私はエディのことが本当に嫌いになってしまった。
そしてそんな自分のことも嫌いになった。
情けなかった。