シンガポールで1番有名な日本人の目指し方 107 【いいね!ください!!】
その日さくらちゃんと私は、若者が集まる街ブギスの裏通りで待ち合わせをしていた。
待ち合わせ場所に現れたさくらちゃんは、
いつもより濃いファンキーなメイクで遠くからでも目立っていた。
なによりおもしろかったのは、旅行用の大きいキャリーケースにポケットティッシュを大量に詰めてきていたこと。
ダルそうにガラガラとキャリーケースを引っ張る姿は、どう見ても『家出少女』だった。
通りを行きかう人のなかで、この中身がポケットティッシュだなんて思う人は絶対いないだろうな。
そう思うと無性におかしくなってきた。
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さくらちゃんが作ってきてくれた、「『いいね!』を押して、ポケットティッシュをゲットしよう!」って書いてあるお手製の看板を持って、私たちは道ばたに立っていた。
その看板には、ここぞとばかり以前に撮ってもらった私たちのランジェリーフォトがどどんと張り付いている。
私が描いていた脳内予想では、5分も立たないうちに、
わらわらと人が集まってきてみんなが我先にと『いいね!』を押してくれる予定だった。
しかし、現実には人っ子一人私たちに近づいてこない。さらには、遠目から怪しいものを見るような目で見られている。
「怪しいものではござーませーーーーーーん!」
って叫びたくなったけど、怪しくないなんて思ってるのは私たちだけで、
本当はメチャクチャ怪しいんだろう。
てか、そもそもポケットティッシュで『いいね!』をゲットしようってアイデアがまず怪しいし、
それを「名案!」とか思っちゃう私もかなり怪しい。
でもその当時は、私たちとにかく必死だったんだよなー。
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だれも話かけてこないのにシビレを切らした私たちは、今度はなりふり構わず
自分たちから声をかけに行く作戦にでた。
その辺に立っている、おじさんやお兄さん達に狙いを定めて、スタタタタと近寄る。
「ハロー!私たちNinja Girlsってゆーんですけどぉ、いまフェイスブックの『いいね』を集めてるんですぅー。『いいね』してくださーい!」
「あぁ、ごめん、今忙しいから。。。」
「お願いしますー、すぐ済みますから!」
「い、いや。。。」
「ティッシュあげますよ!ほらティッシュ!!!!!」
私たちが必死になればなるほど、怪しさが倍増してみんなタジタジになる。
やばい!こんなはずじゃなかったっ!
私たちは何とか体制を整えようとしたんだけど……