シンガポールで1番有名な日本人の目指し方 133 【白い犬】
私はそのイケメンらしき男性を暫く目で追いかけた。
『あの人、かっこいぃ~。』
隣にいたさくらちゃんにそう話しかけると、彼女は0.3秒でこう返してきた。
『声かけてくればいいじゃん。』
私は、いやいや、別にそんなつもりで言ったんじゃないのよ、とかなんとかモジモジしながら話をはぐらかした。
実際そんなつもりじゃないかったんだよ、ホントに。
よくみると、彼は波打ち際を歩きながら、ビーチに寝そべっている女の子たちと楽しそうにおしゃべりをしているではないか!
やはり、ちょっとでも見た目がいい男は遊び人なのだ。間違いない。
いかんいかん。そういう男はいかん。
つばき!イケメンだからといって簡単に鼻の下を伸ばすんじゃない!
危険だぞ!
あたしは自分に危険信号を出した。
★☆
でもね、その日はさくらちゃんがいつになく激しくツッコんでくる。
「いいのかい?本当にいいのかい?声かけなくて後悔しないのかい?」
☆★☆
前にも話したことがあると思うんだけど、チャンスの神様には前髪しかない。
前髪しかないってことは、一瞬のチャンスを逃してしまったら、もう二度とそのチャンスは巡ってこないってことなの。
だって後ろ髪ないんだから。つかめないんだから。
暫くすると、さくらちゃんが私の耳元でこう囁いた。
「見て。あそこにいる白い犬。」
ふと前を見ると、小さいフワフワ系の白い犬がビーチをトコトコと歩いていた。
「あれ、あのイケメンが連れてきてる犬よ!あたしさっきからずっと観察してたの!さぁ、犬好きなフリをして、話しかけてきなさいっ!そしたら怪しまれないわよ、さぁいって!」
い、犬好きなフリって‥‥