シンガポールで一番有名な日本人の目指しかた 15 【恥を捨てろ!】
<はじめての方は目次からご覧ください!>
身支度を整えて意気揚々と、
さくらちゃん家を飛び出した私たち。
そこで、私はあることに‥‥とっても大切なことに、
気づいてしまった。
ハロウィンでもないのに、
芸者ガールもどきに扮装している私(アラサー)。
これ、これ‥‥
ちょーはずかしーーーーーーんですけどっ!
通行人が、不思議なものを見るような目で私たちを眺めている。
やばい、これ、末代までの恥さらし、ってか、
痛い。痛すぎる、こんなアラサー。
ネガティブな(しかしまっとうな)感情が私をつかんで離さない。
シンガポールで人生を変えてやる、
とか意気込んできた成れの果てが、
コスプレもどきのブロガーだなんて。
何やってんだ、あたし。
恥ずかしくて、恥ずかしくて‥‥
し、死ぬ!!!!!!!!
ドアを開けて3秒ほどで、これらのことが頭を駆け巡った。
となりで歩いているさくらちゃんも、
さすがにご近所さんの目が恥ずかしいのか、
ちょっと早足でタクシーをつかまえようとしている。
わたしたちは人目を避けるように、
暗がりから暗がりにササッと移動しながらタクシーを探した。
その動きがはからずとも少し忍者っぽかったことに気づいたのは、
ずいぶん後になってからだった。
その時ようやく、私は悟った。
つまり、
私のような凡人が有名になるということは、
こういうことなのだ、と。
有名になるということは、目立つということは、
恥をさらすことも厭わない、ということなのだと。
私は気安くさくらちゃんの誘いに乗ったことを激しく後悔した。
そんなに簡単に有名になれるわけないんだ。
そんなにおいしい話があるわけないんだ。
世間の冷たい目線に耐えられるくらい心臓が強くなきゃ、
有名になんかなれっこないんだ‥‥
忍者活動3秒目にして、
すでに精神的ダメージレベルが振り切れようとしていた。
これはやばい。やばいぞ。
★
有名になる活動がこんなに恥ずかしいことだとは想像もせずに、
安易に話に乗ってしまった私。
とにかく、今回だけは‥‥今回だけは、
さくらちゃんの手前、最後までやり遂げよう。
そう自分に言い聞かせた私は、
さくらちゃんがつかまえた青いタクシーに、
逃げるように乗り込んだ。